奥谷禮子の私的通信 Reiko's style
サイトマップ
プロフィールトピックスコラム出版物ご感想

トップ >> コラム
 
コラム
 
イラクに日本独自の経済復興支援を
 
 今回の自衛隊派遣の決定に基本的に私は賛成である。憲法の制約があることを思えば、もっと慎重な判断があってしかるべきという意見もあるが、安全が保証される地域にしか行かないということは、筋が通らない。
 かつてカンボジアに選挙管理でPKOを出した時も、ポルポト派の反転攻勢があったことを記憶している。警察官とNGOに死者が出たはずである。
 今度の戦争に大義があったのか、それ自体が不分明だが、世界から38カ国も軍が派遣されていることを見れば、自衛隊が行くことがそう間違っているとも思えない。
 ふだんから石油でお世話になっている地域に恩返しをする、という考えは悪くないのではないか。
 日本は自衛隊の派遣のほかに「車の両輪」ということでODAを使った貢献もすることになっている。
 自衛隊の先遣隊の現場での情報は、治安維持の確保はもちろん、それ以上に雇用の問題が深刻な重要課題と聞く。
 日本はすでに総額36億円の緊急援助を実施しているが、さらに追加で今年度で計40億円の援助を計画している。
 現地が期待する雇用関係では、国連人間居住計画を通じて小・中学校や住宅・コミュニティ施設などを数千軒作る計画で、これで数万人規模の雇用が発生するという。
 新聞報道を見る限り、現地では頻繁に雇用要求デモが起きていて、自衛隊にもそういう期待を抱いているということらしい。しかし、自衛隊の主な任務は給水・浄水、医療支援、建物の建設・修理などであって、住民の期待にダイレクトに応えるものではない。
 私が提案したいのは、日本独自に経済復興の支援ができないかということである。たとえば、サマワでは中国・台湾製の冬物の毛布が売られているそうだが、そういう製品を作るための工場を作る。あるいは暖房器具を作る工場を建てて、人を雇用する。
 サマワの定住人口約4万人のうち2万5千〜3万人が失業中だという。駐留オランダ軍は約2万の職を提供してきたが、住民の不満が募っているという記事を見ると、その職というのは一時的なもので、住民の生活を安定的に支えるものではなかったのではないか、と推測する。
 私はイラクの産業にどんな潜在可能性があるのか知らないのだが、それは専門家の知恵を借りて、できうるなら長く地場産業として根付きそうなものを立ち上げていってはどうかと考えている。
 よく日本の戦後復興をイラクのモデルにと言われるが、日本の場合、戦前にかなりの程度工業化されていたという条件の違いがある。
 ただ言えるのは、経済が豊かになれば民生は安定するということである。それは日本が戦後アジアに果たした陰の役割を見れば分かることではないだろうか。
 ゆえにモデルとすべきはアメリカ流の民主化への道ではなく、日本の経済支援の在り方そのものではないのか、というのが本稿のそもそもの発想の元である。
 現地には、アメリカとは違った日本独自の支援を求める声がある。それは相手の経済を立ち直らせ、遠回しに日本の国益にも繋がるという奥ゆかしい在り方ではないのか、と考える。それが日本が今まで培ってきた"信頼の資産"を増やすことになると信じる。
 
Copyright(c) 2006, Reiko Okutani All Rights Reserved.